こだわりの技

精密板金に使用されるステンレスの系統と特性について

精密板金では、用途に応じて鉄・アルミなど様々な金属・非鉄金属が用いられますが、その中でも、医療や食品などに多く使用されるステンレスには大まかに分けて3種類の系統があります。今回はその系統についてご紹介致します。

1.ステンレス(SUS)オーステナイト系
精密板金加工では、ステンレスではSUS304がよく使用されますが、これは、オーステナイト系ステンレス材料と呼ばれており、18クロム-8ニッケルステンレス(18Cr-8Ni)と言われます。オーステナイト系のステンレスは、延性、靭性、曲げ、深絞りなどの加工性が良く、溶接性にも優れている為、精密板金加工に適した材料です。このオーステナイト系のステンレスは、他の鉄系の材料(S45Cなど)のように熱処理を行っても硬化はせず、そのかわりに軟化します。このオーステナイト組織は、基本的には磁性を有しませんが、冷間加工では磁性が見られることがあります。精密板金など多くの産業機器では、SUS304が主流であり、生産量も薄板が主で、全体の60%を超えています。
このSUS304のほか、代表鋼種としては、SUS301(17Cr-7Ni、冷間加工により高強度が得られ、主にバネ部品などで使用される)や、SUS303(18Cr-8Ni-高S、被切削性に優れている。ボルトやナットなどの用途に使われている。SUS304に比べると切削性はいいが、耐食性に劣る)などがあります。

2.ステンレス(SUS) マルテンサイト系
マルテサイト系ステンレスの代表的な材料はSUS410やSUS420J1などがあり、クロムの含有量は一般的に13%を含むため、クロム系のステンレスと呼ばれます。また、他のステンレスとは違い、磁性を有します。このマルテンサイト系ステンレスは、焼入れや焼き戻しなどの熱処理をする事によって、高強度、高硬度などが得られる性質を持っています。なお、オーステナイト系ステンレスは曲げ・溶接などの加工よりも平鋼での加工が一般的です。
マルテンサイト系ステンレスの代表鋼種としては、SUS410(13Cr、機械加工性・耐食性に優れ、刃物類などに使用される)、SUS420J2 (13Cr-0.3C、焼き入れを行うと硬度が高くなる。刃物・タービンブレードなどに採用)、などがあります。

3.ステンレス(SUS)フェライト系
フェライト系ステンレスの代表的な材料は、SUS430やSUS410Lなどがあり、マルテンサイト系ステンレスと同じクロム系のステンレスですが、フェライト系はクロムの含有量が18%であり、18クロム系のステンレスです。マルテンサイト系ステンレスのように熱処理をしても硬化することがほとんどなく、焼なましの状態で使われます。さらに、マルテンサイト系ステンレスより加工性や耐食性に優れており、溶接性も比較的良好です
代表鋼種としては、SUS430(18Cr、耐食性に優れた汎用鋼種、建築内装・厨房用品など、主に薄板で使用される)があります。

 このように一口にステンレスと言っても様々な種類・系統があり、いろいろな場面にあった最適な材料を見つけて、使用することがとても大事です。

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