精密板金において高品質とローコストを両立させるポイント

精密板金とは

 これまで精密板金の概要と溶接方法について概観してきましたが、それでは、精密板金を設計・製作するにあたって、品質とコストを両立させるためには、どのようなポイントに着目して設計を行えばよいのでしょうか。ここでは考慮すべきポイントについて列挙いたします。

ポイント1. 最適な加工方法を選択する

  • ・プレスブレーキによる曲げ限界を知った上で設計を行う
  • ・なるべく溶接が少なくなるように設計を行う
  • ・ナット溶接とバーリング加工を使い分ける
  • ・市場に流通している鋼材を使用する
  • ・溶接や組立を考慮して、設計する
  • ・板厚をなるべく統一する(違う板厚同士は溶接しにくい、材料費が上がる)
  • ・一体加工できるような設計を行う
  • ・レーザー加工だけではなく、シャーリングや溶断などの切断方法を採用する

ポイント2. 最適な材質・表面処理を選択する

  • ・ステンレスであれば、メーター板、4×8(シハチ)板、5×10(ゴトウ)板が流通しているので、この定尺に合わせて設計を行うとコストが抑えられる。さらに、定尺に収まる設計を行うことで、溶接をする部分を減らしコストダウンを行うことができる。
  • ・流通性の高い材料を選ぶ。定尺ならメーター板、4×8(シハチ)板が多く流通しておりコストが安価。さらに厚さは2mmが一番安価であり、これより薄くなっても、厚くなってもキロ単価が上昇する。
  • ・バフ掛けは#400が主流であり、納期も早くコストも抑えられる。これより目の細かい#800などになると、価格も納期も跳ね上がる。

ポイント3. 最適な溶接方法を選択する

  • ・全周溶接が必要なのか、それともタップ溶接で済ませられるのかを検討する
  • ・強度・見た目・ひずみの許容度から、TIG溶接かYAG溶接かを選択する
  • ・見た目を重視する場合は、ステンレスにはタップ溶接を行わない。コスト重視の場合は、外観を気にしなければタップ溶接を採用する。
  • ・補強などはコストダウンのためスポット溶接を採用する

ポイント4.その他

・バフ研磨を行う場合、肉盛りを残してはいけない場合はTIGを採用する。YAGの場合、肉盛りをグラインダーやサンダー等で除去すると、溶接幅が狭いので強度が落ちてしまうので向かない。

 このように、精密板金を高品質でかつローコストに設計を行うためには、設計段階において切断・曲げ・溶接・組立などの加工工程のことを考えて、織り込んでおくことがよい製品を製作することにつながるのです。

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