精密板金で多く使用されるステンレスの主成分は「鉄」になりますが、この鉄にクロムやニッケルなどの元素を添加することで鉄の性質が大きく変わります。すなわち、クロムを加えることで錆びにくくなり、ニッケルを加えることでさらに錆びにくくなり耐食性が向上します。
それぞれクロムおよびニッケルの成分の含有量に応じて、ステンレスには二種類の系統に分けることができ、一つはクロム系ステンレス、もう一つはクロム・ニッケル系ステンレスとなります。さらに、クロム系ステンレスは常温でのその金属組織から、さらにマルテンサイト系とフェライト系に分類することができます。なお、一般的にステンレス鋼材は磁石が付かない(磁性を帯びない)のですが、フェライト系のみ磁性を帯び磁石がくっつきます(ex.SUS400番系)。また、クロム・ニッケル系ステンレスも、同じく金属組織からオーステナイト系に分類できます。
このように、鉄に含有するクロムとニッケルの割合で大きく分類されるステンレス鋼は、JIS規格による分類(金属組織による分類)では、次の5系統のステンレスが規定されています。
① オーステナイト系ステンレス(クロムニッケル系)
② マルテンサイト系ステンレス(クロム系)
③ フェライト系ステンレス(クロム系)
④ 二相系ステンレス(クロムニッケル系)
⑤ 析出硬化系ステンレス(クロムニッケル系)
(なお、④・⑤は、はさみや海水用など特殊な用途に使用されます)
錆びにくく、耐熱性、耐薬品性、耐食性に優れるステンレスは、その特徴ゆえ多くの産業用途で使われていますが、wその開発にあたっては、各々の環境下で性能を発揮する特徴あるステンレスが要望されてきたからという背景があります。精密板金においても医療機器をはじめ食品機械、半導体、プラント、医薬・化粧品など様々な用途・要求スペックがあるので、精密板金を設計する際にはステンレス鋼材の品種ごとの物性や特徴を理解して、使い道によって最適なものを選択していくことが重要といえます。
次回は各系統について説明させていただきたいと思います。