薄板溶接とは

薄板溶接とは

薄板溶接とは、一般的には1mm以下の母材に対して溶接をすることをいいます。溶接は原理的に母材を溶かして接合するので、板厚が2mm程度であればそこまで気にする必要はありませんが、1mm程度の薄板になると一般的な溶接方法として知られるTig溶接や半自動溶接では溶接範囲が広く必要以上に入熱しやすくなります。その結果、母材同士が接合される前に溶けて穴が空いてしまったり、熱が母材全体に伝わって歪みが発生してしまうなど、溶接の難易度が高くなります
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なぜ薄板溶接は難しいのか?

金属同士を溶接するにあたって熱と歪みは切っても切れないもので、板厚が薄くなればなるほど難易度が上がります。なぜならば、溶接とは互いの接合部分を溶かして(溶けた部分をプールと言う)融合させますが、板が厚い場合は溶けたプール同士が付きやすいのですが、板厚が薄くなればなるほど母材のプールができる前に溶け落ちやすいからです。

板厚が厚い時と薄い時の違い

また、薄板溶接では、溶接するだけではなく、溶接後の歪みをいかに少なくするかも重要です。溶接による歪が発生するメカニズムは、まず、接合部を溶融させる為に熱を入れる(溶接部は何千度にもなります)と母材が膨張し、その後、溶接が終わって冷えてくると逆に母材が縮小して元に戻ろうとする、つまり溶接の入熱による母材の膨張・収縮が発生するということがあります。さらに、溶接をしていない部分(熱影響があった部分とそうでない部分)に関しても発生する膨張・収縮に差が発生するので、最終的に歪が出てしまいます

板が薄くなればなるほど上記の影響を受けやすくなるので、一般的には溶接が難しくなります。しかし、溶接による入熱をコントロールすれば、上記のようなプールが抜け落ちたり、歪みが大きくなる等は回避することができます。

では、どういった工夫をし、治具を使えば薄板溶接でも歪みを回避できるのでしょうか?一般的には、①熱を逃がすために、溶接部に銅板を当てる②歪まないように治具で固定する③歪みが発生しにくいよう溶接の順番を工夫するという方法があります。

このように薄板溶接は難易度が高いため、機能上必要だがどうしても薄板の溶接ができないという理由で、①板厚を上げる、または②溶接をしない別の方法を採用する、ということが行われてきました。しかし、昨今では医療機器や電子機器、または自動車業界においては更なる軽量化・小型化などの目的で薄板へ溶接せざるを得ない状況になっています。そのため、穴を空けず、歪みなく、キレイに薄板溶接を行うか?という技術がますます求められています。

薄板溶接の種類と方法

薄板の金属同士の溶接と言っても、材質や板厚によって溶接方法は異なります。一般的に溶接には下図のような溶接式、溶接方法があり、この他にはスポット溶接などがあります。

薄板参考図1

まず、溶接の元になるアーク溶接について説明します。金属に流れる電流は電極間に多少の隙間があっても電流が流れます。このことをアーク放電と言い、アーク溶接はこのアーク放電の熱を利用する溶接方法です。

そして、アーク溶接は主に溶極式と非溶極式に分かれます。

①非溶極式・・・
電極自体はほとんど溶けずに、溶接棒を溶かすことで溶着する溶接方式

●TIG溶接

 TIG溶接は電極に金属の中でももっとも融点の高いタングステンを使用し、不活性ガスをシールドガスとして使用する溶接方法です。特徴としては電極と母材の間にできたアークの中で溶接棒を溶かして溶接します。アークが安定しているのと溶融池が目視で分かる為、作業がしやすく綺麗な溶接ビードが出来ますが溶接速度が遅いという欠点もあります。
 なおTIG溶接は熱伝導型の溶接になり、アーク熱を利用して母材を溶かし溶接する方法ですので、どちらかといえば浅く、広範囲の溶接に適しています。したがって、薄板などでは溶接範囲が広い為に穴があいてしまいます。

●YAG溶接

  • YAG溶接は
  • ・ イットリューム(Yttrium)
  • ・ アルミニウム(Aluminum)
  • ・ ガーネット(Garnet)

の頭文字をとってYAGといいます。YAGロッドを発振器とし、共振器というミラーに強い光を当ててレーザー光を発振させて共振器で増幅、強力な光の塊になりエネルギーを伝送します。小学生の時に理科の授業で実験したことがある方もいるかと思いますが、太陽の光を虫眼鏡に通して光を集約し、紙を燃やす原理と同じです。YAG溶接は熱が一点に集中する為、熱の入りが少なく、パルス制御なのでビードは均一でビード幅が狭くTIG溶接などと比較すると溶け込みが深く熱伝導も少ないです。
 パルス制御による重ね照射の為、溶接ビードがうろこ状になりますが、熱伝導も少ない為、薄板溶接(t0.5程度まで)も比較的容易にできます。

●ファイバー溶接

 ファイバー溶接はYAG溶接よりさらに進化したと言える溶接方法で、今一番注目されている溶接方法で、光ファイバーケーブルを使用した溶接です。余談ですが、金属母材を切断する加工機なども現在はファイバー切断が主流になってきています。
 TIG溶接やYAG溶接はパルス発振による重ね照射の為、溶接ビードがうろこ状になりますが、ファイバー溶接は連続発振による連続照射の為、溶接部が滑らかで気密性が高く、溶け込みも深い溶接が出来る為、巣などの欠陥が少ない高品質な溶接が出来ます。また、熱源が光なので、電流や電圧などの影響が少ないのも特徴です。さらに、レーザー光がYAG溶接よりさらに小さく集約することが出来る(30~40μ)為、より局部加熱が可能で薄板、微細溶接(弊社ではSUS304 t0.05の溶接が可能)が出来ます。その為、医療、食品、化学等から非常に注目を浴びている溶接方法です。
 また、ファイバー溶接は、異材同士の溶接も可能です。ステンレス+銅、ステンレス+チタン、インコネル+プラチナなどなど多種にわたり溶接することが可能(弊社で実績あり)です。下の写真は弊社のファイバー溶接機で溶接したサンプルです。

真鍮とステンレス t0.2
真鍮とステンレス t0.2
銅とステンレス t0.3
銅とステンレス t0.3

②溶極式・・・
電極自体が溶接棒の役割をし、溶極自体が溶けて溶着する溶接方式

●MIG溶接 MAG溶接 CO2溶接

溶極式の溶接方法の特徴は溶極自体が溶接棒の変わりになるという事です。溶極式にも複数の種類がありますが、一般的に屋内の工場などで使用されている半自動溶接機(CO2溶接)を代表として説明します。
半自動溶接機とはワイヤー供給器にあらかじめ溶接ワイヤーをセットし溶接ワイヤーとシールドガスを自動で供給します。作業者が溶接作業を行いますが、ワイヤー供給とシールドガスは自動供給の為、半自動溶接といわれています。溶接ワイヤー自体が電極となり、連続溶接が出来ます。その他のMIG、MAG溶接も使用するガスの種類などは違いますが、溶接方法としては同じです。TIG溶接や半自動溶接は共にどちらかといえば広範囲の溶接に適しています。

●セルフシールドアーク溶接

 MIG、MAG、CO2溶接は溶接部にシールドガスを当てながら溶接をしますが、セルフシールドアーク溶接は、シールドガスを当てながら溶接はおこないません。なぜならば、セルフシールドアーク溶接は、電極である溶接棒自体に被覆剤が塗布してあり溶接時のアーク熱で被覆剤を分解することにより、シールドガスを発生させながら溶接をする為、溶接部を保護し溶接部の酸化も防いでくれます。主に屋外などではこの溶接方法が使用されています。
 溶接には、いろんな種類がありますが、材質、板厚によって溶接方法や溶接棒も異なり溶接する材質、板厚によって使い分ける必要があります。

では、どの方法が薄板溶接に適しているのか?

ここまで説明してきたように、近年は溶接技術の進歩などにより、一般的なTIG溶接や半自動溶接のほかに、YAG溶接やファイバー溶接といったレーザー溶接など溶接方法も多様化しています。
 YAG溶接やファイバー溶接には溶接ヘッドが固定式なっていて製品を台の上に置いて台を動かしながら製品を溶接する「固定タイプ」と、TIG溶接などと同じで手に持って溶接トーチを動かしながら溶接する「ハンディータイプ」があります。どちらも電流値など細かい調整は必要ですが、溶接職人のような技量などは必要としません。溶接速度も一定で行えるので、溶接もおこないやすく、溶接しやすい方法などを自分で考えることができれば女性でも十分溶接ができ、戦力となることが出来るのです。
 いままでは、溶接=男性職人というイメージが強かったのですが、YAG溶接やファイバー溶接が普及してきたことにより、溶接に対するイメージが変わりつつあります。

では、薄板溶接に適した溶接方法とはなんでしょうか?

結論から申し上げると、薄板・微細溶接に適した溶接方法は、YAG溶接やファイバー溶接です。
 それではなぜ、薄板溶接に向いているか?その理由を説明したいと思います。

TIG・YAG・ファイバー溶接簡略図

TIG・YAG・ファイバー溶接簡略図

上図はTIG、YAG・ファイバー溶接の溶接径の簡略図ですが、TIG溶接は、タングステンを電極として使用している為、エネルギー密度が低く、溶接径が大きい為、広く浅い溶接になり瞬時に溶接材料を溶かす事が出来ません。したがって、母材を溶かすために余分に熱を入れる必要があり、熱が溶接材料全体に広がってしまい、場合によっては溶接母材に穴が空いてしまったり歪みが出てしまい製品にならない、あるいは歪み取りに苦労することが多くなります。よって、1mm以下の薄板や微細溶接は困難です。

一方、YAG・ファイバー溶接は、溶接径が小さくエネルギー密度が高い為、狭く深い溶接により瞬時に溶接材料を溶かす事ができる溶接方法です。YAG溶接は共振器というミラーに強い光を当ててレーザー光を発振させて増幅し、その強力な光の塊となったエネルギーをパルス発振して溶接を行う方法、またファイバー溶接は、光ファイバーケーブルを使用し連続発振による連続照射で溶接する方法です。
 YAG溶接もファイバー溶接も熱源が光なので、電流や電圧などの影響が少なく、レーザー光をレンズによって1点に収束している為光を集約することが可能で、より小さな溶接径で局部を照射できるようになります。YAG溶接のレーザー径は一般的に200~400μ程度でありTIG溶接よりも入熱量も小さく済むので歪みを抑えた薄板溶接ができますが、YAG溶接ではSUSの場合t0.5程度の薄板までです。
 その点、ファイバー溶接はYAG溶接よりさらにレーザー径が小さく集約できレーザー径は30~40μ程度になります。レーザー径が細いということは先ほども述べたとおり、より小さい範囲の局部溶接ができ、入熱量もYAG溶接以上に少なくなります。よって極薄板溶接や微細溶接が出来る様になるのです。当社のように薄板・微細溶接に特化していれば、SUSならばt0.05の極薄板も溶接が可能です。

ファイバー溶接では極薄板や超微細な溶接が出来る為、医療、食品、化学等など様々な分野から軽量化や曲げ及びプレスでは加工出来ないなどの困難な超微細加工も溶接にすることにより加工が出来る場合がある為、今非常に注目を浴びています。

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